医療過誤

このようなお悩みはありませんか

  • 「症状を医師に伝えていたのに、何も検査をしてもらえなかった」
  • 「がんが見つかったときには手遅れであり、見落としがあったのではないかと思う」
  • 「手術後に容態が急変したが、納得いく説明を受けていない」

このような疑問や不安から、弁護士へご相談にくる方が多くいらっしゃいます。

医療事件の被害者は、病院から何が起きたかすら、きちんと説明もしてもらえないケースがあります。医療の専門性、密室性から、患者が「蚊帳の外」に置かれてしまうこともあります。もちろん、予期せぬ結果のすべてが医療過誤というわけではなく、医療行為に問題が認められない、結果は不可避だったというケースもあります。しかし、何があったかの説明も満足に受けられないことから、何が起きたのかという疑問や不信感を持ってしまうのも当然です。当事務所では、ご依頼者さまに寄り添いつつ、事案について分析し、いかなる医療行為に問題があったのか、それとも不可避的な合併症の問題だったのかなどの調査をした上で、解決方法を検討いたします。

医療過誤への対応方法

1.調査

医療過誤の相談を受けた場合、医療機関に対していきなり損害賠償請求することは通常ありません。まずは、問題となった医療行為について、「法的な責任追及ができるか」、それとも「法的な責任追及が困難であるのか」を調査します。

調査においては、まず、カルテの取得・分析を行い、事実経過の把握を行います。カルテの取得方法は、①カルテ開示手続き、②証拠保全手続の2種類があります。カルテ開示手続は、患者(あるいは代理人)が病院にカルテの開示を求める方法です。証拠保全手続は、事前の予告なしに裁判官が病院に赴いて、カルテの保全を行う方法です。証拠保全は、費用がかかりますが、カルテの改ざんのおそれが高い場合には、証拠保全を選択する方がよいでしょう。
その後、医学文献の収集、協力医師からの意見聴取などのステップを踏みます。
医療過誤について、法的責任を追及するためには、①病院側の過失、②過失と結果との因果関係が認められる必要があるので、これらの点を意識して調査を行います。
調査の結果、「責任追及が可能である」という結論に至った場合には、示談交渉・訴訟という手続きに移行することになります。調査の結果、医療側の注意義務違反を問うことは困難との結論に至り、調査のみで終了となることもあります。

2.示談交渉

調査や証拠保全をした上で、病院側に明らからな医療過誤があった場合には、示談交渉の申入れを行うことになります。
病院が責任を認めて損害額がいくらになるかを協議することもあれば、病院が責任を認めずに示談交渉が決裂することもあります。
示談交渉が決裂した場合でも、患者側の主張に対する病院側の反論が示談交渉を通じて分かることが多いので、訴訟に移行した場合の再反論を意識して資料の収集や主張の組み立てをすることができます。

3.訴訟(裁判)

裁判は、裁判官が患者側、医療機関側双方から提出された証拠を基に事実認定をして判決を下します。
訴状や準備書面で、患者側の主張を整理して記載し、主張を根拠づける証拠(医学文献や協力医の意見書など)を提出します。病院側も同様に、反論を記載した準備書面や証拠を提出します。
争点整理手続にて、これらの主張や証拠を整理した後、証人尋問を行います。尋問の対象となるのは、主として、担当医師、協力医、前医・後医、患者本人、遺族などです。
これらの手続きを経て、判決となりますが、判決の前に、裁判所から和解案が示され、和解による解決がされることもあります。

【これまでの解決事例】

1 肺がんの見落とし案件

  • ア 事案の概要
    肺の異常所見を指摘されてから、異常所見の診療のために、5年以上定期的に通院し、多数回の胸部CT検査を受けていたにもかかわらず、経時的に増大・悪化していく肺腺癌の所見について、精密検査の受診を勧められず、漫然と経過観察が続けられた結果、他院において肺腺癌との診断を受けた際には、事実上治療不能な末期癌の状態になっていました。その後、抗がん剤等の治療を受けたものの、結局、肺がんによる死亡に至ったという事案です。ご遺族から依頼を受けて、訴訟を提起しました。


  • イ 解決内容
    協力医の意見書を提出し、協力医、被告主治医の尋問などを経て、判決に至りました。
    裁判所は、医師は、肺のCTないしレントゲン画像に肺癌の所見と合致する陰影の存在を認めたときは、いたずらに経過観察をすることなく、患者に対し、肺癌に罹患している可能性があることを適切に説明した上、肺癌の確定診断を行うための気管支鏡検査を含む精密検査を受けるよう勧めるべき義務を負うものというべきであると認定し、具体的な事実経過に即して、病院側に義務違反があると認定しました。

    被告病院側は、統計によれば、StageⅠBの臨床病期の5年生存率は、63.4~66.1%(転移等があれば更に低い)であり、現実の死亡時点で生存し得た高度の蓋然性はなく、過失と死亡との因果関係が認められないとの反論もしてきました。
    これに対し、当方は、協力医の意見書、証言等により、当初の病期は、StageⅠBで転移もなかったこと、腺癌の進行速度は比較的遅いとされる上、実際の経過に照らしても、進行速度は遅かったこと、持病もなかったことなどから、早期に外科治療が行われていれば予後は良好だったと考えられ、平均余命までの延命可能性があったと反論しました。

    その結果、判決は、病院側が注意義務を尽くして肺がんの治療が早期に開始されていれば、外科手術による根治可能な状態であったとして、平均余命までの延命可能性を認定し、約4200万円の損害賠償を認めました。
    病院側は控訴しましたが、控訴審でも、裁判所の心証はかわらず、一審判決と同様の内容で和解をしました。

2 肝臓がんの見落とし案件

  • ア 事案の概要
    被告病院は、「アルコール性肝硬変寛解、主として糖尿病のフォロー実施」との診療情報提供書を受け取っていたものの、3年以上にわたって、たった1回腹部超音波検査を行った以外は、画像検査を行わず、腫瘍マーカーの測定も全く行わないままでした。 その結果、たまたま肝数値の異常に気付いた主治医が画像検査を行った際には、肝右葉に15センチ大の巨大な肝臓癌が生じていました。患者は、入院となりましたが、結局、肝臓がんにより死亡するに至りました。
    ご遺族から相談を受けて、訴訟提起をしました。


  • イ 解決内容
    アルコール性肝硬変の患者は、肝臓がん発症のリスクが高く、定期的な検査が不可欠であるにもかかわらず、全く検査が行われていなかった点に過失があるとして、訴訟を提起しました。肝臓がんのリスクがある患者の経過観察について、医学文献等を提出し、問題点を丁寧に立証するようにしました。

    裁判所も病院側の過失を認めるとの心証であったため、勝訴的な和解となりました。長期間通院していたにもかかわらず、早期に肝臓がんを発見してもらえなかったご本人及びご遺族の無念さを反映させるために、和解条項に「肝硬変に対する経過観察について、遺憾の意を表する」という文言を盛り込ませました。

3 救命できた相当程度の可能性について1500万円の慰謝料が認容された事例

  • 出産直後の女性が、出血性ショックで死亡したという事案の訴訟です。
    裁判所は、医師が、適切な輸液を行うべき注意義務に違反したとの認定をしました。もっとも、羊水塞栓症が弛緩出血に関与していた可能性も少なからずあったことから、過失と死亡との間に高度の蓋然性までは認められず、救命できた相当程度の可能性があるにとどまるとされました。

    このような場合でも、最高裁平成12年9月22日判決によれば、「医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負う」とされています。

    ただ、実務上は、「相当程度の可能性」に対する慰謝料は数百万円程度にとどまることが多いのが実情です。しかし、本件については、救命された高度の蓋然性を認めるには足りないが、救命された可能性は相当高い程度に達していたと認められるとして、1500万円の慰謝料が認容されました。

    なお、本件判決については、判例タイムズ1297号224頁に掲載されています。

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